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大阪地方裁判所 昭和60年(わ)633号 判決 1985年7月08日

本店所在地

大阪市南区心斎橋筋一丁目六番地

有限会社大阪ホール

右代表者

王厚龍

本籍

中国江蘇省鎮江西門外

住居

大阪市南区心斎橋筋一丁目六番地

無職

王正芳

大正一四年五月一四日生

右有限会社大阪ホール及び右王正芳に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官宇田川力雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社大阪ホールを罰金七〇〇〇万円に、被告人王正芳を懲役二年にそれぞれ処する。

被告人王正芳に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社大阪ホール(以下「被告会社」という)は、大阪府枚方市川原町三〇四番地の一に本店を置き(昭和六〇年三月一九日肩書本店所在地に移転)、大阪市内などにおいてパチンコ店などを経営していたものであり、被告人王正芳は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人王正芳は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一  被告会社の昭和五五年一〇月一日から昭和五六年九月三〇日までの事業年度における所得金額が七、九五八万六、五三八円(別表(一)修正貸借対照表参照)あったのにかかわらず、昭和五六年一一月二八日、大阪府枚方市大垣内町二丁目九番九号所在の所轄枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が四、七一一万五、八六四円で、これに対する法人税額が一、八一九万一、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度における正規の法人税額三、一八一万五、四〇〇円(別表(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一、三六二万四、〇〇〇円を免れ

第二  被告会社の昭和五六年一〇月一日から昭和五七年九月三〇日までの事業年度における所得金額が四億四、六七七万八、四七三円(別表(二)修正貸借対照表参照)あったのにかかわらず、昭和五七年一一月二九日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が八、一七九万九、二九七円で、これに対する法人税額が三、二七五万四、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度における正規の法人税額一億八、六〇二万九、六〇〇円(別表(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一億五、三二七万五、二〇〇円を免れ

第三  被告会社の昭和五七年一〇月一日から昭和五八年九月三〇日までの事業年度における所得金額が六億九、八二二万六、三五二円(別表(三)修正貸借対照表参照)あったのにかかわらず、昭和五八年一一月二九日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が四億四、二三八万六、二三四円で、これに対する法人税額が一億八、四〇一万二、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度における正規の法人税額二億九、一四六万三、六〇〇円(別表(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一億〇七四五万一、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人王正芳の当公判廷における供述

一  被告人王正芳の検察官に対する昭和六〇年二月一五日付及び同月一八日付各供述調書

一  被告人王正芳に対する収税官吏の昭和五九年四月五日付、同月九日付、同年六月七日付、同月一一日付、同月二六日付、同年八月八日付、同月一七日付、同年九月一七日付、同月二一日付、同年一〇月九日付、同月二四日付及び同年一一月一四日付(一五枚綴の分)各質問てん末書

一  王厚龍、王厚生(三通)、王巧子及び藤崎彰の検察官に対する各供述調書

一  王厚龍(四通)、王厚生(三通)、王巧子(二通)、趙淑華、岡美保子(昭和五九年九月一八日付五枚綴の分)、及び藤崎寛に対する収税官吏の各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書一一通

一  検察事務官作成の実況見分調書

一  枚方税務署長作成の証明書三通

一  収税官吏作成の脱税額計算書三通

一  法人登記簿謄本(昭和六〇年五月二三日作成のもの)

(法令の適用)

被告人王正芳の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、それぞれにつき所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとする。

被告会社に対しては、法人税法一六四条一項により被告人王正芳の前記同法一五九条一項の違反行為につきいずれも同条項の罰金刑に処すべきところ、それぞれにつき情状により同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により右各罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金七、〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、判示のとおりパチンコ店などを経営する被告会社が代表取締役であった被告人王の不正行為により三事業年度分で合計二億七、〇〇〇万円余りの法人税を免れたという事案であるが、そのほ脱額が多額であること、犯行の動機に格別斟酌すべき事情はなく、犯行の態様も毎日のように(昭和五六年一〇月ころまでは週二、三回くらい)経常的にコンピューターの売上データーを操作して売上金の一部を除外したうえ、その現金で有価証券を購入するなどして秘匿するという甚だ芳しからざるものであること、被告人王には納税義務を履行するという規範意識が希薄であったこと、被告人王は本件につき国税当局による強制捜査を受けるに及んでもなお法人税を免れようとして、期首において多額の貸付金が存したように虚偽の主張をするとともに、知人、銀行員らに積極的に働きかけ、あるいは死亡した知人の名前まで利用して貸付金の存在の偽装工作をしていたもので、自らの不正行為に対する反省の態度がみられなかったことなどに照らすと、被告人王及び被告会社の刑責は重いといわなければならない。しかし、一方では、被告人王は前記偽装工作が発覚して結局は本件起訴事実を認め、当公判廷においては改悛の情を示すに至ったこと、被告人王には前科がないこと、被告人王は本件起訴後被告会社の役員を一切辞任したこと、被告会社は本件ほ脱にかかる各事業年度分の法人税本税、重加算税及び延滞税並びに法人事業税、府民税、市民税の本税を全額納付したこと、被告会社においては今後本件のような脱税の犯行を重ねないための体勢をとるべく努力していることなど被告人王及び被告会社に有利な事情もある。そこで、これらの情状を総合考慮し、被告人王及び被告会社に対し主文掲記の各刑を量定したものである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 野間洋之助)

別表(一) 修正貸借対照表

昭和56年9月30日現在

<省略>

別表(二) 修正貸借対照表

昭和57年9月30日現在

<省略>

別表(三) 修正貸借対照表

昭和58年9月30日現在

<省略>

別表(四)

脱税額計算書

<省略>

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